男性介護者にも料理教室を
男性介護者向けの料理教室が、料理の技術向上だけではなく、現代社会で薄れがちな『心の繋がり』を取り戻す心温まるニュースです。
男性介護者向け料理教室 一緒に作って、つながる みんなで笑って
ケアメンズキッチン」と題した料理教室が10月中旬、福岡市で開かれた。参加したのは、妻や親などを介護する男性(ケアメン)たち。厚生労働省によると、今や同居する介護者の3割が男性だ。男性たちはどんな思いで参加しているのだろう。 ...
昔とは違い、今は親子2世代同居で家にいる誰から小さい子や高齢者の面倒をみる、というライフスタイルは失われつつあります。これからどんどん「自分たちで介護者となる」未来へと変わっていくでしょう。こちらのニュースでも書かれていますが、男性は家事慣れしていない方が多く、いざ介護者となった時に料理ができないことに困る方が多いようです。料理の基本がわからないと必要な食材や調味料などもわからず、総菜などに偏りがちになります。買い物に出る機会が少なく、介護に追われて引きこもりがちになってしまうと、精神的にもまいってしまいますから、同じ苦労を共有する仲間ができることは励みになるでしょう。こういった男性介護者向けの料理教室は、二重の意味でのセーフティネットとなりそうです。
増える男性介護者と料理スキルの必要性
高齢化社会と呼ばれるようになってずいぶん経ちますが、少子化の影響もあって今後その傾向は強まっていくでしょう。子世代にも余裕がなく、また高齢者の数が増える速度が速くなりますので、自分たちの面倒は自分でみなければなりません。親や妻の介護を自分でしている男性介護者の割合も増えており、介護者全体の三割ほどいるそうです。この割合も、年々増加していくことでしょう。高齢者には持病があったりあごが弱ったりといった理由で、市販の総菜は食べられないケースも多く存在します。女性に比べて家事経験が少ない男性介護者にとって、料理はなんとしても身につけておくべきスキルと言えるでしょう。
全国に広がる男性介護者向け料理教室
今回ご紹介したニュースは福岡のものですが、同様の男性介護者向けの料理教室は全国的にも広まりつつあるようです。介護者の約3割が男性というわけですから、3人に1人くらいの割合になりますね。そう考えると、こういった教室は需要が高まっているのでしょう。男性は女性の輪の中には入っていきづらいものです。必然的に相談先がなく、孤立しやすくなってしまいますので、こういった『男性介護者向け』という同じ目線で話せる仲間ができる料理教室が必要になるのでしょう。
介護食は、塩分や糖分、カロリーなどの栄養価はもちろんですが、柔らかいもの、飲み込みやすいものなど、食感にまで気を配らなければなりません。普段から料理をしている方が多い女性はともかく、男性が突然介護という現実に立たされた時、知識ゼロの状態から対応するのには限界があります。こうした男性向けの介護料理教室は、数年後にはメジャーなものとなっているかもしれませんね。出来合いの総菜やお弁当に頼っていた方にとっては、健康的な食生活を目指すきっかけにもなるでしょう。
男性介護者向けのの料理教室・講座は地域活動としての開催が多く、参加費も無料か材料費のみの安価で設定されていることが多いようです。お住まいの地域でそういったイベントがあるかどうか、チェックしてみるとよいかもしれませんね。
料理ができる男性は介護の未来を救う?
実際のところ、介護自体はある意味男性向けの仕事と言えます。実際に介護経験のある方はご存知でしょうが、介護には力仕事もかなりの割合であります。たとえば、女性がひとりで身体の不自由な高齢者をお風呂に入れることはとても大変です。認知症の方の中には攻撃的になる方もいて、女性では抑えることが難しい場合もあります。
それでも介護士に女性が多いのは、身の回りの世話といった家事の延長線として、介護の技術を身に着ける方が多いからかもしれません。日本の社会は、かなり近年まで男性が社会に出てお金を稼ぎ、女性が家庭で支えるスタイルでした。女性の社会進出が浸透して、男女平等に仕事をもつことが一般化してきた今でも、その傾向はまだ残っています。しかし、それは逆に男性が、今まで女性の担ってきた仕事に飛び込むことが難しいということでもあります。男性が料理をすることが一般化すれば、力仕事もじゅうぶんにこなせる男性介護士が増えていくかもしれません。
男性が料理を覚えていくことは、将来的に自分が介護者になった時、独居老人になった時といった場合はもちろん、介護を仕事にしていきたい方にも重要なスキルとなっていくのではないでしょうか。少なくとも料理を覚えておいて損をするということは、まずありません。健康的な料理を作る技術を、この機会に学んでみてはいかがでしょうか?